【地球を4周半した男】
「面白いお客さんが来てる、すぐお店に来て!」
スナックのママからのLINEだった。
普通なら
鍵を掛けず、「勝手にどうぞ」と書いてある紙を置いてお店を不在にするママ。そんなママがちゃんとお店にいるほど面白いお客さんが来ているという事だ。 店に着くと、バイクと自転車で地球を4周半した男が旅の話をしていた。世界地図にマジックの線。通った道をなぞりながらアルバムの写真を紹介する。
旅の最中、アフリカのジャングルでバイクが故障した。このままでは脱水で死んでしまうピンチ。なんとか現地民族に助けられて村に連れていかれた。
脱水で死にそうだった自分が、やっと水を飲める感動を写真に収めたいと思い、カメラを村の人に渡して写真をお願いした。救済の水が入ったコップとポーズを取り、「ボタンを押して」と依頼した。バースデーケーキのロウソクに火が付いている状態で写真を撮りたいように、彼は水を飲む直前の写真を撮りたかった。
しかし、村人はカメラを下に向けてボタンを押す。地面を写した。説明を改めて受けたが、また向きを間違えて今度はドアップの自撮りを撮った。アフリカ人はカメラの使い方が分からなかった。水を飲むのを我慢しながらコップとのポーズを保ちつつ、写真が上手く撮れないせいで脱水病が徐々に進む。
当時の旅は携帯やデジカメではなく、インスタントカメラ(フィルム)の限られた枚数で思い出を残した。「水を飲む」ポーズで写真を撮りすぎた分、他の思い出が残らなかった。しかし、アフリカ人のドアップは静岡の小さなスナックを盛り上げた。
Download the HelloTalk app to join the conversation.