文学研究者が集まって話すと、村上春樹などの、大衆文学と純文学の境目を跨ぐような売れっ子作家は、やや貶される傾向がある。一
般人は騙されるかもしれないけどオレは興味ないな、と言わんばかりに天邪鬼の態度を取る人は少なくない。確かに過去の「名作」のほうが奥深いかもしれない。あるいは全然売れていないけれど何か実験的なことに挑戦しているマイナーな現代作家のほうが称賛に値するかもしれない。でも春樹みたいな作家も大事な役割を果たしている。こういう手に取りやすい小説を読むことが、その読者には文学というものを知るきっかけになるかもしれないし、次はもっと渋い作家に進む可能性もある。何せ人の好みを揶揄してはいけない。どうせ好みは、偶然な出会いに起因することが多いから。文学に偶然に出会う機会を多くの人に提供している作家に我々は感謝したほうがいいのではないか。Download the HelloTalk app to join the conversation.