私は、その男の写真を三葉(さんよう)、見たことがある。 一葉は、その男の、幼年時代(ゆうねんじだい)、とでも言うべきであろうか、十歳前後(ぜんご)かと推定(すいてい)される頃の写真であって、その子供が大勢(おおせい)の女のひとに取りかこまれ、(それは、その子供の姉たち、妹たち、それから、従姉妹いとこたちかと想像される)庭園(ていえん)の池(いけ)のほとりに、荒(あら)い縞(しま)の袴(はかま)をはいて立ち、首を三十度ほど左に傾け(かたむけ)、醜(みに)く笑っている写真である。